12:好き。
小さな陰がコンクリートを横切って
私は空を見上げ、あ。と立ち止まる
あれは…
愛しのトリィ!!
トリィは風に乗ってフェンスを超え
止めたエレカ付近にたむろしている少年達
(多分私と同じ位)の内の一人の手の中へ舞い降りた
あまりのトリィの可愛さに、周りの少年達もかなり興味を引かれてるみたい
きっと皆今頃はハートをとろかせて
トリィに惚れ惚れしてるんじゃないかな
って!それって…すっごく危ないじゃん!
可愛いトリィ
そりゃ思わずさらっちゃいたい位
だから…きっと…きっと
『うわー可愛い鳥だなぁ』
『ああ、こんなキュートな鳥は見た事がない』
『なんかさ…さらっちゃいたくなるよな』
『俺も!俺も今そう思った!』
『よし。今だれも見てないし…』
『すぐにバックレれば大丈夫だよな』
こんな会話が繰り広げられてるんだー!
間違い無いよ!!
トリィが危ない
待ってて、今助けてあげるからっ
脳内にトリィの助けを呼ぶ声が響きわたる
私はマッハでフェンスにかけより
勢いよくフェンスをよじ登った
てっぺんの鉄線がちくちくするけど構ってられない
トリィの為なら、フェンスなんて意味ナシ
「そこの少年達ー!誘拐は犯罪だって知ってるか!?」
今にもトリィを連れ去ろうとしている(ように見える)少年達に
フェンスのてっぺんからビシッと言い放ち
両足をフェンスから離して見事な着地…
を、決めようと思ったけど
はりきり過ぎたせいで、足ではなく顔面から見事な着地を決めた
いたた、とうめいて顔を上げると
冷たい視線が四人分
トリィだけが可愛らしく首を捻っていた
「何だ貴様…」
帽子を目深に被った銀髪の少年が
目線と同じような冷たさで呟く
立ちあがって、土ぼこりを払って
ゴホンと咳払いを一つして、しきり直し
「あんた達!誘拐は犯罪なのよ!!」
「「「「はぁ?」」」」
ははーん、そうやって意味が分らないよって顔して
誤魔化すつもりね
「とぼけないで、トリィがあんまり可愛いからって
誘拐しようとしてたでしょ!」
「「「「はぁ?」」」」
まだ誤魔化すつもりか…
じゃあ仕方が無い、言ってだめなら
力ずくでトリィを救出しなきゃ!
「力ずくなんて、ホントは嫌だけどっ!」
トリィを手に乗せていた
まぁそこそこ…いや、結構顔の良い少年に飛びかかると
軽々かわされ
かわされて体勢を崩したスキを付かれて
背後から両手を掴みあげられた
「はい残念ー」
「離せ離せー!」
バンザイをしている様なカッコで拘束されても
せめてもと足だけでも暴れる私を見て
一番幼そうな少年が笑っていた
「威勢のいい子ですね」
く、くやしい…いくら一対四でこっちが圧倒的に不利だとはいえ
愛しのトリィを犯罪者から守れなかった
悔しさと悲しさを含ませた目で
トリィとトリィを乗せた少年を見つめると、
少年は緑色の瞳を見開いてフェンスの向こうを見ていた
つられて私も目を動かす
と
「トリィー」
キラ。
キラもトリィを探しているのかキョロキョロ辺りを見まわして
そしてやっと少年達+私とトリィに気がついて
歩みを止めた
これでニ対四、か
さっきよりは遥かにこちらが有利になった
「キラ!こいつらトリィを誘拐する気――」
私が全部を言い終わる前に
トリィを手に乗せた少年が、キラに歩み寄る
「キミ、の?」
いや、ゆくゆくは私のものになる予定なんだけど…
って、なんでキラのだって分ったの?
それ以上に、何でキラにはあっさり返そうとするの!?
そりゃキラはストライクとか乗ってて
ビミョーに強そうなオーラが出てるのかもしんないけど
これは贔屓だ。
「うわぁー酷い!贔屓は犯罪だぁあ」
再び暴れ出した私を
キラと対峙した少年は何ともいえない目で見つめてきて
キラに向き直る
「あの子、キミの仲間?」
「…認めたくないけど」
そこで認めてよキラ!
今知った事じゃないけど、キラって私に対して
なんかこう、ビミョーに黒いのよね…
トリィと相思相愛の私が気に入らないのは無理無い話だけど
「貴様、なんかちょっと可哀相なヤツだな」
キラの認めたくない発言に対して
誘拐犯から同情されてしまった…
屈辱だぁ
じゃあ、と言って緑の少年はキラに背を向け
キラの「あの…!」という声に呼びとめられた
「あの…よかったらさ、あの子…もらってくれない?」
あの子=私
「こらー!キラあんた何言ってくれてんのー!」
「いや、遠慮しておくよ…」
「あんたも即行で拒否しない!」
この二人、何気に息が合ってて恐ろしい
一番幼い少年と銀髪の少年が
ますます同情的な目線を送ってくる
唯一
「こーんな可愛い子だったら俺大歓迎だけどな」
私を拘束する少年の一言が嬉しかった
「ディアッカ、離してやれ」
緑の瞳の少年が言って
両手の拘束が解ける
「行くぞ」
と続いた声に他の三人が静かに従う
エレカに乗り込んで、ディアッカとかいう少年の
「バイバーイ」
というのん気な声を最後に
誘拐未遂犯達は去っていった
なんとなくそれを見送って
そこでトリィを思い出して
キラを見ると
私の事なんて完全無視で、トリィを連れ
工場内へ向かって歩き出していた
「ちょ、ちょっと待ってよー」
慌ててフェンスをよじ登り
小走りでキラの隣に付く
「さっきのアレ、本気で言ってたでしょ」
「うん」
やっぱり
「…ねぇ、」
「ん?」
「あのフェンス、結構高かったよね」
「まぁー。でもトリィの為ならあんなフェンス何の障害にもなんない!」
「…」
微妙に私が苦手なシリアスな空気になってしまった
俯いたキラの表情はよく読み取れないけど
「のそーゆー所は、少し羨ましいって思う」
ポツリと呟いた言葉だけはかろうじて届いた
「じ、じゃあその愛を称えて、今夜トリィを貸し出し――」
「駄目」
「ちっ」
いつの間にかキラはいつものキラに戻っていた
私はなんだか安心したやら
がっかりしたやら
悔し紛れに、低空飛行のトリィを追いかけ回したら
晩御飯没収を言い渡された
End
初トリィ。
誰がなんと言ってもトリィ夢なんです
そして、ヒロインも初!ナチュラル
今までコーディネイターor人間外ヒロインしか
書いたことなかったので、今回はどうしてもナチュラルヒロインで
書きたかったんです!
が、説明しないと
ヒロインが初!ナチュラルな事はおろか
設定も話の流れも全く分らない作品に…
えと、ヒロインは…といいますか、貴方は
フレイと同じ救難ボートに乗っていて、AAに保護された際
トリィと(強調)運命的な出会いを果しました!
以後、キラとし烈なトリィ争奪戦を繰り広げています。
キラが黒い…ってか冷たいのはそのせいかと…
でもキラは決して貴方が嫌いなのではないです!
むしろ、「どうして僕じゃなくてトリィなんだ…」てな事を思ってるんですよ。
あ、それからこの話は、言わずもがな
28話をベースにしてあります。
ふう…長かった説明がやっと終わった…
ハロ夢に引き続き、トリィ夢をリクしてくれた
いたっちゃん、こんなんでよかったでしょうか?
またリク楽しみに待ってます。
次はなんだろう…?デュエル夢とか??
と考えていたら、デュエル夢いっこ思いついてしまったよ…