君のとなりで、愛を語ろう
居所は少し調べればすぐに分かった
けれど、訪ねる事もせずにここに留まっているのは何故だろう
変わってしまった自分を見られたくない、のかもしれない
沢山戦って、この手を血に染めた
戦争だったから。その一言で終わらせてしまう程俺は全てを知っていたわけじゃない
何も知らなかったから、沢山奪って、沢山傷つけた
だから、あいつには会う資格がないなんて
「言い訳だよな、流石に」
呟きは、向かいあっている慰霊碑だけが受け止めた
結局、今更なのだ
今更、どんな顔をして会えばいいのか分からない
あいつが一人ぼっちになると知っていたのに
行かないで、と縋る目をしていたのに
それを振り切ってプラントに行ってしまった
そんな自分が、今更
――
背後に響いた足音に振り返る
一瞬、都合のいい夢でも見ているのかと思った
それとも、悪い夢でも見ているのかと……思った
「嘘だろ……?」
最後に見た時とほとんど変わらない姿でがそこに居た
慰霊碑に手向ける為なのか、両手に花を抱えている
抱える花の優しい色とは対照的に、は冷ややかな視線だけをこちらに向けていた
「あ、あの……久しぶり」
「あなた、誰」
ぴしゃりとは言い切った
呆然となる俺の横をすり抜け、静かに慰霊碑に花を手向ける
「な、何冗談言ってんだよ?俺だよ、シンだよ」
「知らない。あなたなんて」
嘘だ。
だって、声が震えてる
「今更……久しぶり、なんてーーシンなんて知らないっ」
振り返ったの目には、涙が一杯溜まっていて
声も、握りしめた拳も震えていて
罪悪感だけが、胸を占めた
「――ごめん」
「今更謝らないでよ」
でも、本当にごめん
言っても、怒られるだけだから心の中で呟く
「……チョコだって、もう捨てたんだから」
「チョコ?」
首を傾げたが、懸命に記憶を探ってやっと見つけた
のチョコが欲しいとねだった無邪気だった自分
そして、に伝えたかった言葉も
「シン」
静かにが俺の名を呼ぶ
まっすぐな視線を、まっすぐに受け止めた
「チョコはないけれど……教えて」
伝えたかったのは、愛の言葉
「」
沢山奪って、沢山傷つけて
変わってしまった自分の、変わらない気持ち
「好きだよ」
end
微妙なハッピーエンド
「好きだ」と告白するシーンを書くのは恥ずかしいです。