100万ドルの寝顔
早まる気持ちを抑えつけ
両の手の平を胸の前で合わせて息を吸い込む
「では…いただきまーす!」
「って、堂々とハレンチ行為かよ」
突如背後からのツッコミに
一瞬動きを止められたけど
気を取り直して、もう一度いただきますを言い
目の前のごちそうに飛びつく姿勢をとった
「オ、オイッ無視かよ!」
今度は焦った声と伸びてきた手が
私の赤い軍服の襟を掴んで、その場に引きとめた
「な、何すんだコラ!」
「何しようとしてんだコラ」
「何って」
バタバタ暴れて、襟を掴む手を振り払うと
背後の邪魔者へ振り向く
「隊長をいただく!」
「真顔で変態発言かよ」
「だって」
あんまりにも可愛い顔で
あんまりにも無防備に寝てるから
「これを襲わずして何を襲えってのよ!?」
「いきなりキレんなよ…」
褐色の肌が困惑気に歪む
はいはいはい、戦友で親友で上司を守りたい気持ちも
分からなくはないけど
恨むなら、あたしの前で無防備さらした
戦友で親友で上司を恨んでね
「ええい!止めるなディアッカ!あたしは味わい尽くすんだから!」
「誰を味わい尽くすって?」
「だから隊長よ!我等がたいちょー…」
はたと気づき、言葉を途中で切った
今のは、ディアッカの声じゃない
ということは、
顔をゆっくり回転させ、今は背後になっていた人物を
振り返り見る
さっきまでは両瞼をしっかり閉じ
銀の髪を頬に貼り付かせ、天使のような寝顔を見せていた隊長の
同一人物とは思えない程の険悪な表情が視界に入った
あたしはチッと舌打ちしてから
ギロリとディアッカを睨み上げた
「あーあ」
「お前な、もっと誤魔化すとかしろよ…」
「裏表ないのが、あたしの長所ですので」
「けどよ、なーんか可愛さに欠けるだろ?」
「む。そう?」
「で、、貴様何をしでかすつもりだったんだ?答えろ」
怒りを前面に押し出した顔が問う
可愛さに欠けると言われてしまったあたしは
隊長に向けて、にっこり微笑んで
わざとらしく敬礼してみせた
「は。隊長があまりに素晴らしい顔で夢の世界に旅だっているので、
この際快楽の世界にも旅だって頂こうと思った次第であります!」
「誤魔化す気ゼロだな」
ディアッカが静かに、何度目かのツッコミを呟く
いちいちツッコムなんて、ご苦労様だなぁ…と
他人事のように思った
「…ディアッカ」
これまた静かに、隊長が親友兼部下の名を呼ぶ
「俺が許可する。殺れ」
「えぇ!?」
大げさにディアッカが驚く
一方あたしは、嫌そうな表情を作ってディアッカを見た
「ディアッカは勘弁。どうせヤられるなら、隊長が良いであります」
あきらかに違う意味として言った、あたしの答えに
ヒィ。とでも言いたげに、隊長の体と銀の髪が揺れた
…あ、今のはちょっと引かれたかな?
「あ、今のは冗談です」
若干反省して、言葉を付け足してみたけれど
もう手遅れだと言わんばかりに
隊長の体からは殺気が漂い出している
今なら本当に殺られそう
「・…」
「はい」
「後で…隊長室に来い。たっぷりと――」
「可愛がってやる?」
恐る恐るディアッカが茶化し
隊長が爆発した
「ディアッカァア!貴様も来い!みっちり説教してやる!」
白い服と銀髪を揺らし
寝顔は天使な隊長はブリッジを後にした
「…俺まで説教だよ」
「茶々入れなきゃいいのに」
「まぁそーなんだけどさ、なんつーか、アレだよアレ」
「おちょくらずにはいられない?」
ニヤリと笑ってあたしが言うと
「そうそう、それ」
ディアッカが笑い返した
「んじゃま、お茶でも一杯飲んでから、怒られに行きますか」
軽い口調のディアッカに、それはいいアイデアだと軽く返し
すぐに溜息をついた
「あーあ、でも、どうせ怒られるならいただいちゃった後が良かったなぁ…」
「はいはい。イザークの前ではもう絶対言うなよ」
がっくり落とした肩を、ディアッカがポンポンと叩く
「せめて…写メっときゃよかった…」
「はいはい。またチャンスはあるって」
励ましの声の余韻をブリッジに残して
反省ゼロのあたしとディアッカは
キレイな顔を般若に変えて、待ち構えているだろう
我等が愛しい隊長にたっぷり2時間は怒られるべく隊長室に向かう前に
まずは、お茶を一杯と
仲良く肩を並べ食堂と向かった
End
フォトなんとかシリーズの第4弾のお昼寝イザークが
あまりにも可愛かったので、思わず夢を書いてしまいました…
寝ていたのが、隊長室かブリッジか忘れてしまったので
ブリッジで眠っていた設定にしました
ちなみに、ヒロイン設定としては
アカデミーに入ったのがシン達とだいたい同じ頃で
初めて配属された隊がジュール隊。
年は16才位?