護符
「おい!」
「ん?」
「貴様、今すぐ自分のMS点検しろ!!」
「え…何で?」
「いいからっ、今すぐだぞ?分かったな!」
「…」
意味不明な命令だけを残して
さっさと立ち去っていったイザーク
の、背中を見送りながら
頭だけ振り返っていた状態の私はしばらくそのまま固まった
突然大声で呼びかけてきて何かと思えば
意味不明の命令。
イザークが意味不明な事を言うのは
いつもの事だし、慣れてるけど
今回のは、特別難解だ
なんで点検まで命令されなきゃいけないの?
いくら恋人だからって、そこまで干渉するなよ
「ほんっとにオレ様なんだから…」
頭を正面に戻して
目線を天井に向けて、小さく息を吐き出す
でも、そんなヤツに惚れたのは他でもない私なのよね
右手で抱えていた報告書の束に目をやって
ごめんなさい隊長。と呟く
これも惚れた弱みってやつで
素早く踵を返してクルーゼ隊長の部屋へ続く廊下に背を向け
地面を蹴った
「あれ、?」
どこからか声がして
コックピットにねじ込みかけた頭と身体を
声の方向へ向ける
「あ、アスラン」
「ここで何やってるんだ?隊長に呼ばれてたんじゃ…」
「うーんそうなんだけどさ、なんかイザークに“MS点検しろ!”って命令されちゃって」
「で、こっちを優先させたのか?」
「隊長には内緒ね」
人差し指を口の前にかざすと
アスランはやや大きめのため息をつく
多分今のは私に対してだろう
「早く点検済ませて、隊長のトコ行くんだぞ?」
「分かってるって」
「…でも、イザークも何で急に点検しろなんて言い出すんだ?」
顎に手をかけ、すっかり推理モードに入ったアスランを
横目で捉えつつ
さぁ。とだけ答える
私とアスランを悩ませる謎は
「あ。」
コックピットの中へ入ってすぐに解けた
モニターの上にちょこんと置かれた
桃色の小さな箱
赤いリボンが架けられて、どこからどうみてもそれは――
「…プレゼント?」
コックピットへ頭だけ突っ込んできたアスランが
私の頭に浮かんだのと同じ言葉を言った
「イザークから」
「…だよね…?」
もしかしなくても、コレの為にあんな命令したのよね
箱をつまみ上げ、手の平に乗せてじっと見つめてみる
お世辞にもキレイと言えないリボンの結び方
イザークらしい。
アスランもそう思ったのか、笑った口元を手で押さえていた
丁寧にリボンを解く
ゆっくり上箱を取って、中を覗くとそこには
「…」
「えーー…っと」
白い、細い輪になった紐をつまんで顔の前に掲げる
平べったくて、ほんの少しの厚みしかないソレは
私とアスランの顔の前で左右に揺れた
長方形の上端両方が動物の耳みたいに折り曲げられてる
不思議な形
金の糸で大きく書かれた
「交通安全」
の四文字
ぽかんと開いたまま動かせなくなった私の口の代わりに
アスランが呟いた
「…イザークらしいな」
3月14日。
今日はホワイトデー
End
イザークがホワイトデーにくれたのは
お守りです。
クロスでもなく、なんとかの守り石でもなく
お守りです!!!
プラントにお守りがあるのかは分かりませんが
イザークは絶対お守り持ってます(断定)
ちなみに、「交通安全」のお守りにしたのは
「厄除け」か「交通安全」か悩んだ末に
「アイツ操縦めちゃくちゃだからなー…」
という事で、安全運転(操縦?)しろよ的な意味で
チョイスされたそうです。
愛がこもってますね!!