この日私は、小さな太陽に出会った
ハローハロゥ
「ピンクちゃーん、どこに行ってしまいましたのー?」
その声で、目を覚ました
とてもラクスに似た声だったけど
きっと他人の空似ね
ここは私の秘密の森
イザ―クにだって内緒にしてる
こんな所にラクスが居るハズもない
ふわふわの草から上半身を起こして
んー、と思いっきり伸びをする
それにしても、今日はなんか太陽が近いなぁ
しかも今日の太陽はピンク色
可愛らしい目が二つとキュートな口がある
「…ん?」
「ハロー」
「太陽じゃ、ない?」
「ミトメタクナーイ!」
それは太陽じゃなかった
目の前に浮くそれは――
めちゃくちゃ可愛い!!
なになに?この可愛さ、見たことない
丸っこいフォルムとか
耳か羽かわからないパタパタとか
誰がこんな罪な物体を作ったの?
ドキドキハアハアしながら、恐る恐る手を伸ばすと
スッと横に逃げられた
「あっ…」
「アソボー」
遊んで欲しがって、る?
「OK!」
私は満面の笑みで親指を立ててみせた
この丸い物体――通称ピン子(私がつけた)は本当にすばしっこくて
なかなか追いつけない
私の手をひらりとかわし
あざ笑うかのように「ハロー」なんて言って
余裕の構えを見せている
追いかけては逃げられ
追いかけては逃げられ
何度もそれを繰り返していると
ふいに、ピン子がこちらに背を向け停止する
チャンス
とばかりに、思いきり飛びかかった
…と、同時に
見知った男女の逢引現場を目撃してしまった
アスランと、ラクス
ラクスはそうでもないけど、アスランの笑顔はどこかぎこちない
いつもの大人な態度とは大違いじゃん
まぁ、意外と可愛い所もあるのね
若いカップルの邪魔をするのは失礼だし
こっちはこっちでこのかわいこちゃんとのランデブーを
楽しみたいので
木陰でやりすごそう
そう考えて、近くの手頃な木に隠れたものの
ピン子を掴んでた手をうっかり緩めて
ピン子の小さな体はひょろひょろと
二人に向かって飛んでいった
「ピン子!駄目!」
慌てた私は、これまったうっかり叫びながら
木陰から飛び出して
「ラクスー」
と発しながら飛ぶピン子共々
二人の注目を浴びた
「あら?」
「…?」
二人共、目を丸くしてる…無理もない
けど、ラクスの方はもう片方の飛び出してきた物体が
何かに気付いて、パッと顔を輝かせた
「まぁまぁピンクちゃん、やっと見つけましたわ」
「…え?」
“ピンクちゃん”ってピン子の事?
「ラクス、このプリティーピンクの物体知ってるの?」
「ええ、ピンクちゃんはアスランが下さった、わたくしのお友達ですわ」
「へぇー…って、え?こここれアスランが作ったの?」
確かに、こーゆーのは得意だって聞いてたけど
これをアスランが…
私は、自分でも分る位の輝く瞳でアスランを見上げた
「すごーいアスラン!私生まれて初めてアスランの婚約者になりたいと思った!」
誉めたにも関わらず、アスランは渋い顔をする
「よしてくれよ、そんな事言われたってイザ―クに知れたら恨まれるのは俺なんだから」
どうやら、そっちの方が重要っぽい
やたら絡まれるのが面倒臭いんだろう
「別にいいじゃん。いいなラクス、本当に羨ましい」
ラクスになつくピン子…いやいや、ピンクちゃん
本当に本当に本当に羨ましい
涌き出るよだれを抑える私を見て、ラクスが嬉しそうに笑う
「嬉しいですわ、わたくしと同じ様にハロを好きになってくださる方がいて」
「…ハロ?」
「正式にはハロっていうんだ。こいつはピンクだから“ピンクちゃん”らしい」
「へーそうなんだ」
ううん、なんか奥が深いなぁ
そういえば、ピンクちゃんも「ハロハロ」言ってたな
「あ、てことはピンクの他にブルーとかもいたりして?」
「はい!もちろん」
見ますか?と聞かれて、速攻首を縦に振りかけ
はたと思いとどまる
「あ、でも、邪魔じゃない?デート中なのにさ」
二人は顔を見合わせて、困ったように笑いあった
「違うよ。今日はハロのメンテナンスに来たんだ」
「そうですわ、アスランとはピンクちゃんを探している時にたまたまここでお会いしましたの」
「そうなの?」
あれ、でもちょっと待って
アスランがハロのメンテナンスに来たのなら
なんでクライン家じゃなくて、こんな森にいるの?
しかもラクスもこんな所で遊んでいるし
素直にこの疑問をぶつけてみると
更に二人は不思議そうな顔をした
「ここはクライン家の庭だから居るんだけど」
アスランの衝撃の一言
…ここは、私が秘密の森だと思っていたここは
ラクスの家の庭だったの?
ということは私は不法侵入者?
「あ、あはは…そうだった、んだぁ…あはは」
これはもう、笑ってごまかすしかない
こそどうしてここに居るの?と突っ込まない
二人の鈍さにとりあえずは感謝した
End
ハロとの出会い編です。
友達に「ハロ夢書いて!」とリクをもらって
この話を考えたのですが
ヒロインの設定を考えてる時、どういうワケか脳内で話が広がってしまったんで
折角なので連載夢にする事になりました
次の話からはイザ―クとか出てきます多分…
このお話はイタチちゃんに捧げます。