兼保護者
「じゃ、行ってくるねー」
「待て」
手を伸ばして、襟の後ろを掴むと
「ぐぇ」と、とても可愛くない声がした
「な、何何?」
「…貴様正気か!?」
「はい?」
約二分前
いそいそと部屋を出ていくを発見し
どこへ行くのかと訪ねると
ニコニコ笑顔で返事がきた
『アスランがハロ作るトコ見せてくれるって』
「アスランと!部屋で!二人っきりなんて俺が許すわけないだろうが!!」
拳を握り締め、力の限り叫ぶと
は不思議そうな目で俺を見つめる
「…どうしていちいちイザークの許可がいるの?」
ぎゃふん。
いくらなんでもそれは酷いだろう
前にディアッカ辺りが
『ってイザークの彼女って自覚あんのかな』
などと言っていたが
あの言葉は正しかったのかもしれない
ここはきちんと言っておかなければ
「馬鹿か。貴様は俺の――」
「あ!もしかしてイザークも誘って欲しかった?」
「は?」
「それならそうと言えば良いのに、変な意地張って」
「い、いや…そういう訳では――」
「じゃ、一緒に行こう」
嬉しそうなの顔に
「し、仕方ないな。がそこまで言うなら行ってやろう」
負けたわけではないが
優しい俺は、の誘いに従った
「やっぱり来ると思ったよ、イザークも」
「うるさい!」
呆れた笑いを浮かべるアスランを一喝し
向かいのベッドに腰を下ろした
「はーなる程。そのパーツはそこかぁ」
「…近すぎ、手元が見えない」
「いいじゃん!できるだけ近くで見たいの!」
「…分かったよ」
ちょっと困りながらも、まんざらでもないように笑うなアスラン
密着しすぎだろ…
く…ストレスが溜まる…
二人の様子を見ていても、イライラするだけなので
棚にあった『泣ける!ベスト50』という本を取り出し
パラパラめくり
やがてそれに集中していった
「イザーク…イザーク…」
何故か小声のアスランの声で
涙涙の世界から引き戻され、アスランを睨みつけた
「何の用だ。今ちょうど犬と子供が
天使に持ち上げられてる、良いシーンなんだ」
「…が」
。
その単語に、犬と子供は頭から消えうせ
すぐにに視線を送った
「…おい」
こちらに背を向け、机に手をついて立つの首は
一定のリズムで上がったり下がったり
もしかして
「眠っているのか?」
「そうみたいだな」
首はがくがくやってるが、立ったまま眠るなんて器用なヤツだ
傍まで行き「おい」と肩を掴むと
は傾き、胸の中に倒れ込んできた
「…熟睡してるぞ」
「そうみたいだな」
単純なパーツの組み立ての繰り返しだから
眠くなったんだろうとアスランは続け
ハロを作る手を止めた
「俺のベッドで寝かせておけば?」
「そんな危険なことができるか」
「別に何もしないって…」
信用できるか
アスランのベッドというだけで危険だ
起こすのが可哀相な程ぐっすり眠っているので
仕方ない、このまま連れて帰ろう…
なんとか眠るをおぶると
隣からくすくすと笑い声が聞こえた
「なんだ」
「お前って、恋人っていうより保護者だな」
「うるさい」
部屋を出、時折ずれてくるの体を背負い直しながら
通路を歩く
「ふふふー」
変な笑い方だが、きっといい夢でも見ているのだろう
「イエローちゃん捕まえた!」
「ぐ」
突然寝言と共に力を込めたの両腕に首を締め上げられ
離せ離せと暴れている内に
何時の間にか背中のは消え、辺りは花畑になって
川の向こうから見知った顔が俺を呼んでいた
End
この後イザ―クはギリギリの所で、たまたま通りかかったニコルに救出されます。
見知った顔というのは…多分、ミのつく人かラのつく人あたりかと…
イザークに横抱きをしてもらうか、おんぶかでだいぶ悩んだのですが
「イザ−クならおんぶだろ!」という変なイメージに基づきおんぶにしました。