つまるところ、それが俺とヤツの差で
差
「ディアッカー!」
叫び声と扉が開く機械音と弾丸の様に飛び込んでくる人物に
頭が鈍い反応を示した
「…あ?」
その人物は――は勢い余って壁にぶつかりかけ
慌てて壁をけり返して
ようやく、ベッドで寛ぐ俺の前まで到着すると
必死の形相で掴み掛かってきた
当然、掴み掛かられる覚えはない
「っ何だよイキナリ…!」
「か、かくまって!」
「はぁ?」
「助けてよぉかくまってよディアッカー」
ちょっと落ち着け、ちゃんと説明してくれ
その前に手を離してくれ
息ができない
なんとか襟首にまとわりついていた手を振り解いて
かくまれと連呼するを落ち着かせるべく
扉をロックしてやった
「ほら、これで誰も入ってこれないから落ち着けって」
「よ、よかった…」
「てか、誰から逃げてんの?」
「だ、誰って――」
「ー!!ここにいるのは分かっている!観念して出てこいっ」
イザーク、か
面倒くさい事になりそうだ
一応扉はロックした本人しか開けられないので
いくら同室だからって
イザークでも開けることはできない
けど、なぁ?
俺としてはイザークをあまり怒らせたくないし
ここで開けた方が、俺の身を守る為には一番いいんだけど…
「絶っっ対開けないでね」
…そうもいかない、か
「てゆーかさぁ」
イザークから逃げてる割りには
逃げてる相手のベッドの上で、逃げてる相手の肌掛けを被って
震えるを横目で見ながら
純粋な疑問をぶつける
「は何でイザークから逃げてんの?」
「うっ…そそ、それは…」
素早く俺の視線から顔をそむけ
聞いてくれるな。というオーラを全身から出している様子に
俺の中の悪魔がほくそ笑んだ
これはで遊べる、数少ないチャンスだと
「ここを開けろ!ディアッカ!さもないと――」
ひっきりなしにドンドンと叩かれる扉の騒音と叫び声を背後にして
ゆっくりへ詰め寄る
「教えてもらう権利、俺にはあるんじゃない?」
ここは俺の部屋だし、巻き込まれた哀れな被害者だし
「い、言えない言えない!」
「ふーーん」
ニヤリと口元を歪ませ一気に距離を詰める
がひるんだ隙に、肌掛けに隠された両手を掴みあげ
ベッドに押し倒す
拘束した両手はの頭上へ
すかさず左足をの両足の間に滑り込ませて
「じゃあ力づくで聞かせてもらおうかな」
そっと耳元で囁いてみた
どうせイザークに怒られるのは決定済み
それに、密室で二人きりというこの状況もなにかと疑われるんだろうし
身に覚えが無いのに疑われる位なら
身に覚えを作っても同じ
まぁ、だからって本気でナニするってわけでもないけど
ちょっとは興味がある
“な、なんのつもりよ、ディアッカ!?”
とか言って恥ずかしそうに頬を染めるに
「――ぐっ!?」
突然、全身に激痛が走った
ほんの一瞬の油断だった
激痛の原点に目をやると
の左膝が、つまり俺の両足に挟まれるかっこうになっていた足が
声を大にして言えない部分を、思い切り蹴り上げていた
力が入らなくなって緩んだ俺の手から
はするりと右手を引き抜き、力任せに俺の顔面を殴る
「…ってぇ!」
「なんのつもりよ、ディアッカ」
いたって普通に、なんの動揺もない
むしろとても冷静だ
こういうことには鈍いのか?
ってか、マジで痛い…
流石赤。って感じ?
「もー、今はふざけてる場合じゃないでしょ」
「…」
「この後どうすればいいか考えてよ」
「…はい」
もう大人しくいいなりになった方がいいのかもしれない
と
諦めかけた時
扉が開く音がした
「「え?」」
開いた先には、憤然と仁王立ちしているイザークと
やや疲れた感じで何かの機械を持っているアスランがいた
どうやらアスランに頼んで
その何らかの機械をつかって開けてもらったらしい
プライドを捨てて頼んだのか、イザーク
よっぽど、怒ってるんだな
怒りに震える瞳が、床に崩れ落ちている俺を睨み付け
次にベッドの上で震えるを見据え
人目もはばからず叫んだ
「!貴様ぁ!何故逃げたっ」
「だだだって!」
腹をくくったのか、自分を責める態度にカチンときたのか
ベッドの上に立ち上がり、イザークに食いつく
心なしか、の頬が赤い
そしてイザークの頬は別の意味で赤い
よく考えなくてもあれはビンタの跡だ
「イザークがあんな所でいきなり迫ってくるからでしょ!」
「うるさい!キスを迫って何が悪い!」
「そそ、そーゆーのは夜二人きりの部屋で電気を消してじゃないと嫌って言ったじゃん!」
「だがさっきはキスをしてもおかしくない雰囲気だっただろ!?」
「でも駄目なもんはだーめー!!」
相変わらず痛みを堪える俺と
うんざりした顔のアスランを尻目にぎゃあぎゃあ痴話喧嘩を繰り広げる
恋人…バカップルが二人
つまりは、だ
キスを迫ってきたイザークから逃げてきた
ということか
さっき、キスなんかより上をいく行為をしようとした俺には普通の反応で
キスといういたって可愛い行為をしようとしたイザークには
いっぱしの乙女の様な反応
…納得いくはずがない
ああ、でも、そうか
それが俺とヤツの差ってやつ、か
「明るい場所でのキスなんて、は、恥ずかしいでしょー!!」
の絶叫が、やけに遠く感じた
End
彼女という自覚はないけれど、キスやその他についての
恥じらいはある。という話
本命とそうでない人との差、ですね
ディアッカファンの人にはごめんなさいですが
これでイザークとヒロインの間には恋愛が成立しているという
証明にはなったかと!
ニコルがでてこなかったのは、たまたまです!!