27:溶けたアイス#2





「…で、

「…」

「具体的に、俺はどうすればいいんだ…?」

「…えっと…」


ベッドの上で正座して、膝を突き合わせて
奇妙な空気が支配する部屋で私とアスランは困惑していた

二人で住むには大きすぎる家
そこの一室をあてがってもらい、代わりに家事全般を任されることになった

今の私にとって一番必要な血は
キラとアスランが数日置きに、交互に提供してくれることになった

そして今夜は、初めてアスランが血を提供してくれる日だった


「寝た方がいいのか?このままでもいいのか?」

「そ、そのままでも大丈夫…」


けれど、こんなに面と向かってだと
私自身もどうすればいいのか分からない

この前キラの血を飲んだ時、キラは眠っていたし
その前は…


「あ。予め刃物で切っておいた方がいいのか?それとも…直接噛んで血をだすのか?」

「…」


正直、この状況で血を貰うのは恥ずかしい
膝を突き合わせて、緑の瞳で見つめられて

考えが顔に滲み出て、頬が熱を持ったのを感じた


「…やっぱり」

「…え?」

「面と向かってだと、飲みにくいよな…コップにでも入れようか?」


熱を持った頬に気づいたのか、アスランは気を遣ってくれたけど
コップに血を絞り出す様を想像してしまい、勢い良く頭を振った


「コ、コップはいい…そのままで、お願いします」

「そうか」


ふう。とひとつ溜息を付き、おもむろにアスランが
襟を引っ張り、首を曲げた


「さぁ、俺の準備はいいから、飲んでくれ」


反らせた首筋に、藍色の髪が少しかかる
心臓が大きく高鳴ったのは
もちろん血を求めたからだけど、それだけじゃなく

綺麗だと、思ってしまった

口に出してはとても言えないけれど

いつでもドウゾといった体勢のアスランを見
恐る恐る呼びかける


「あの…アスラン」

「なんだ?今更嫌がったりしないぞ?」

「そうじゃなくて…あの…」


恥ずかしい。

とは言えない

観念して…と私が言うのも可笑しいけれど
覚悟を決めた私は小さく息を吸って、吐いて
人差し指を伸ばし、アスランの首筋に爪を立てて小さな傷を作る

きっと、一瞬でも苦痛に歪んだ筈だから
アスランの顔は見なかった

両手を両肩に置き、血の滲む首に顔を近づける
鉄のような香りが、鼻に届く

傷口に舌を押し付けると、アスランの体が僅かに震えた


「…ん」


漏れでた声が耳にかかる
私は余計に口許に意識を集中させた


「ふーん、そうやって飲むんだ」


唐突に聞こえた声

二人同時にギクリと肩を震わせて
反射的に私はアスランの首から口を離した


「キ…キラ!?」

「もうそれだけでいいの?


驚く私とアスランを他所に
いつの間に入っていたのか分からないキラが淡々と話しを進める


「もっと沢山飲むのかと思った」

「あの…」

「あ、それともアスランの血って美味しくないの?」

「なっ…そ、そうなのか?」


焦った顔のアスランに軽く詰め寄られ
力無く首を振ると、安心したようだった


「…で、キラは何故ここにいる?というかいつから居たんだ?」

「僕の番になった時にスムーズに行くように見学に来た。いつから居たのかは秘密」


キラは、人差し指を口に当てて笑った



止血の為、バンソウコウが貼られた首を
アスランは恥ずかしそうに撫でていた





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ほのぼの…?
面と向かって、てやりにくいですよね、色々

多分、次からはシリアスに戻ります。