悲しい愛の唄#3
「素晴らしい決断だ、嬉しいよ」
軍への復帰を報告したに、デュランダルは満足げな笑みを浮かべ
包み込むような視線見た
拒否権など無かった、とは信じた
もしかするとそれはあったのかもしれないが
例えあったとしても、そちらを選ぶ勇気を持てない
心のどこかで彼を恐れていたから
それ以上に、プラントへの裏切りと思われるのが怖かったから
結局自分は過去を何も克服できていないのではないか
ミーアに手渡された軍服をやけに重く感じながら
人知れず溜息をつく
「これ着たら、議長室に来てね」
「…分かった」
軍服一式とを残すとミーアは立ち去りかけ
ワクワクした瞳で振り返る
「どうしたの?」
「あとで、すっごい人に会えるから!」
「凄い人?」
「そ、凄い人」
見当がつかず、首を傾げたを残して
今度こそミーアは部屋を後にした
残されたは腕に抱える赤い軍服に目を落とす
「…また、これを着るなんて…」
嬉しいという感情はもちろん湧かない
けれど、懐かしい思いは僅かにあった
この赤い軍服を着て、色々な事があった
仲間と呼べる存在ができた
その仲間の死をこの目で見た事もあった
仲間に殺されかけて、そしてアスランに会って…
「アスラン…」
無意識に呟きが漏れた
彼は今どうしているのだろう
自分の軍復帰を知ったら、彼は何と言うだろうか
には想像がつかない
想いを打ち消すように頭を振って、軍服をソファに置いた
ふと、桃色の何かが見え疑問に思ったは上着の下敷きになっている
桃色の何かを引っ張り出し、目の高さで掲げた
桃色のスカートがの目の前で僅かに揺れる
「ス、スカートなの!?」
知らないうちに、軍も変わったな…と
変な感心をしてしまった
袖を通した赤い軍服に
嬉しいという感情はもちろん湧かない
けれど、懐かしい思いは僅かにあった
複雑な気持ちで着替えを済ませたアスランに
ミーアの感嘆の声が飛んだ
目を輝かせて自分を見るミーアを見る気にはなれず
アスランは心持ち顔を伏せ、デュランダルを見た
と、重厚な扉のノックが小さく部屋に響き
ゆっくりと扉が開く
「…失礼します」
音と声につられて、なんとなく扉へ顔を向けたアスランは
扉の向こうから現れた懐かしい顔に
一瞬言葉を詰まらせた
「…っ?」
声に反応し、伏せていた顔を上げたの体が強張る
見開いた青磁の瞳が、軍服姿のアスランを映した
「ア…スラン…」
扉を押し開けたまま、固まっているの元へ
駆け寄ったミーアが腕を取り
引き摺るように中へ招き入れた
「可愛い!」
「え?あ…ありがと」
とりあえず礼を述べ
またすぐにアスランへ視線を戻す
「…どうして」
無意識に呟くと、気まずそうには視線を逸らした
は軍から離れたと、イザークから聞いていたのに
今は静かに暮らしていると思っていたのに
それなのに、アスランの目の前には軍服を着たがいた
「私がに頼んだのだよ、軍に戻ってきて欲しいとね」
アスランの困惑を察したデュランダルが告げる
それで、少し納得がいった
が自ら軍復帰を望むとは考えにくかったから
けれど
「何故…そんな事を」
「彼女の力が必要だと感じたからさ」
その言葉は真実か?
デュランダルの瞳を見つめ、真意を探ったが
アスランには見つける事が出来ない
「ねぇねぇ、アスランは知ってるの?」
を引き摺ったまま、傍へ来たミーアが
やはり瞳を輝かせて問う
「知ってるって…何を」
「がラクス様の妹って事!」
「あ…あぁ、まぁ」
「やっぱり!さっすが婚約者」
「い、いや…だからってワケじゃ」
の事を知ったのはほとんど偶然に近い
あの時、あの場所で出会わなければ
自分は何も知らないままだった
婚約者という立場でも知らされなかった秘密
唇を固く結び、目を逸らし続けるを無言で
アスランは見つめた
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3話目にしてようやくアスラン登場
本編で言うと、セイバーもらったあたり…?のつもりです。
ザフトの軍服は、最初スカートを見た時
スカートて!
と、思わず突っ込んでしまいましたが
見なれると、結構可愛いですね。はいてみたいです。