前略、森の中より#2





「ザフトの為に!ザフトの為に!」



けたたましい声がそこら中に反響して


「「「「「「…」」」」」」


しばらく経って、やっとそれが


時計のベルだと気がついた


アイマスクを取ると、丁度アスランが
踏み潰してベルを止めている所だった

アスランも相当頭にきているらしい


僕達が殺すつもりで――つまり、本気になってやっと五分五分だと
彼女、は言った

単なる挑発だろうけれど
僕達を本気にさせるには充分


「…」


静かに怒るアスランとは対照的に
全身で怒りを表してる人が一人

が居なくなった所で、抑えていた怒りが爆発したらしい


「な、なんだあの女はぁ!?」

「まーまー落ちつけってイザーク」

「これが落ちついていられるかぁあ!」

「いーじゃん、俺達のが凄いってトコ見せればいいんだろ?」


ディアッカとラスティが説得しても
全く聞く様子がなく、暴れつづけるイザークに


「うるさい。ピーチク喚くなバカ。もう演習が始まっているんだ」


アスランの冷たい一言が刺さる

背後から冷たいオーラを出しながら怒るアスランに
たじろんだディアッカとラスティとは違い
イザークは更に熱くなって喚き散らした


下手に口を出すと巻き込まれそうだったので
少し離れた場所にいるミゲルの傍へ向かった

ミゲルは、アスラン達の様にプライドを傷付けられた
風でもなく

むしろ、ニコニコしている


「ミゲル…どうしたんですか?気味悪く笑って」


「なぁ、二コル」

「はい」

「一目ボレって、ホントにあるんだな」

「…はい?」


一目ボレって
あの、一目ボレ?


「一応聞きますけど、誰、ですか?」

「野暮な事聞くなってー、彼女に決まってんだろ?」


やっぱり、というか
彼女以外だと言われると、とても困る


でも

何故、よりによって…


初対面は最悪の印象だったハズなのに


「あんな女の何処が良い!?」


アスラン達と言い争いながらも、ちゃっかり
こちらの話を聞いていたらしいイザークが
僕の代わりに聞いてくれた


「なーに、お前の魅力分かんなかったのか?」

「魅力ぅ?」

「ま、ライバルは少ない方がいいけどな」


一目ボレした事か

いきなり呼び捨てにした事か

一体何処に突っ込めばいいのか悩んでいる間に
自分を落ちつかせる為、腕を掴んでいるディアッカの手を払い

ふんっと偉そうに鼻を鳴らすイザーク


「こんな色ボケ男と行動などできん。行くぞディアッカ」

「え、ちょ、イザーク!」

「ま、待って下さいよ!こういう時は団体行動をとるのが原則…」

「知るか!貴様らに足を引っ張られるのは御免だ」


イザークの中には
彼女を打ち負かしたい気持ちと
アスランに負けたくないという気持ちがあるんだろう

思いっきりアスランに挑戦的な目を向けているから


「見ていろアスラン。俺が先にを捕まえてみせる!」


アスランは黙ってイザークを睨み返していた
ラスティの「こえー」と呟いた声が、かろうじて僕の耳に届いた


「さっさと行くぞ!ディアッカ」

「お、おい待てよー!」



「…いいんですか?別行動させても」


二人が見えなくなった後
こっそりアスランに訪ねると、いいんだ。と即答された


「どうせ居たって足手まといだ」

「はぁ…まぁそうですけど…」


彼女の実力は未知数

例え強さが僕達と互角かそれ以下だとしても
彼女には実戦経験がある

それも、豊富に


「四人で…大丈夫ですか?アスラン」

「充分だ」


エースパイロットは、自信があってなんぼだと言うけれど
自信が有りすぎると
周りの人に迷惑だ



「なんだか…先が思いやられますね…」



うっかり漏れた本音は、誰の耳にも届かなかったらしい





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今回はニコル視点で!

早速仲間割れしてしまったメンバー
さてさて、どうなってしまうのでしょう?(わざとらしい!)

ミゲルは、敵に恋してしまうタチなのかもしれない…
というのは、私の希望です。