前略、森の中より#8
深深と幹に刺さる矢を指でなぞり
矢の飛んできた方向を調べているは
例のラブレターの衝撃からは、少し立ち直ったようだ
ちなみに、例のラブレターは
未だに俺の目の前で恥ずかしい文面を曝し続けている
「…ん?」
矢の飛んできた方向に目を向けていたは呟き
一瞬眩しそうな目をした後
笑った
「ふーん」
「何がふーんなんだ?」
を見上げたイザークが
聞きたかったことを、代わりに聞いてくれた
「んんー?うん、誘いに乗ってみるのもいいかなと思って」
「誘い?」
「何?あのラブレターに返事でもすんの?」
冗談半分の発言は
「さ、そうと決まれば準備準備」
完全に無視された
「ほっ」
変な掛け声をあげ、が矢の刺さった木を
スイスイ登っていく
真下から見上げながら
「…スカートだったら良かったのに」
「なっ何を言っているんだ貴様ぁ!」
何故か頬を真っ赤に染めたイザークに怒られた
しばらく、ごそごそ物音を木の上でたて
やがてひらりと舞い降りてきたは
腰の左側に拳銃を一丁吊り
更に右手にも一丁持っていた
「ふふっふーん」
不思議なリズムの鼻歌を奏で
右手の拳銃を簡単に点検すると
ベルトの後ろにねじ込み、腰に手を当てた
「うしっ準備完了ー!」
準備を整えたらしいは、声も表情もどことなく生き生きしているように見える
これから戦闘になるかもしれないのに…
いや、戦闘になるからこそあんなに生き生きしてるのか?
流石軍人…
と、やけに感心してしまった俺を見
次にイザークを見て、がにっこり笑う
「じゃ、ちょこっと行ってくるわね」
「あぁ…気を付けてな」
「えぇ!ちょ…イザーク!なんで普通に見送ろうとしてんの!?いちおーはまだ敵だろ?」
「うっうるさい!つい言ってしまったんだ!つい!」
つい。で敵に気をつけろなんて言うか?フツー
まぁ、イザークは捕虜になるのも早かったし
色々あったから、との絆ができつつあるのかもしれない
なので、あえて俺はを挑発してみる事にした
口許に笑みを作り、を呼びとめる
「ねぇ、俺達二人だけにしておいていーの?」
「ん?どういう事?」
「見張りが居ないなら、逃げちゃうかもよ俺達」
「ディアッカ貴様、何を言い出すんだ!?」
「ちょっと黙ってろって、イザーク」
「んーそうね」
人差し指を顎に当て、ちょっと考える素振りを見せたは
「じゃ、足の骨折っとこうか?」
平然と言ったので、俺は早口で逃げない事を誓った
「いいなー、楽しそうだな。羨ましいぜあいつ等」
双眼鏡の向こうに広がる羨ましい光景を見
一人呟く
愛しのマイハニーことは、ディアッカとイザークに
ひらひらと手を振った後
一度こっちを見て、双眼鏡の狭い画面から消えた
ラブレターの効果があったらしく、自らこっちに来てくれるらしい
を待ち伏せ、戦闘になるのもいいし
あえてここは引き、焦らしてみるのもいい
「どっちにしよーかな」
双眼鏡から目を離し、鼻歌混じりに下の方へ目をやると
赤い軍服の三人組を発見した
太い枝の上で座りなおし、三人がこの木の下を
通るタイミングを見計らい
膝を支点に体を倒し、逆さ吊りの状態で三人の前に現れてみせた
「よ!久しぶりー」
軽く片手を上げ(向こうにとっては下げた事になるのか?)
挨拶すると
逆さまのニコルとラスティが、おぉ!と驚きの声を上げ
同じく逆さまのアスランは、片眉を上げあからさまに嫌そうな顔をした
「ミゲル…こんな所で何やってるんですか?」
驚きから立ち直ったニコルが問う
「の観察」
答えながら、腹筋を使い逆さ吊りの上半身を元に戻す
再び枝に座った俺を、三人はそれぞれに見上げた
「あの爆弾、お前等だろ」
「そうですけど…」
余計な事をしてくれた。
と思ったが口には出さないでおいた
何が悲しくて好きな女の子が他の男を押し倒す姿を
見なきゃならないんだ。と文句のひとつも言いたかったが我慢我慢
小さな男だとは思われたくない
まぁ、それはさておき
「で、あれの他にお前等何か作戦あんの?」
「いや、今から考える所」
素直に答えたラスティに、ふーんと返し
ちょっと俺は、閃いた
「じゃあさ、今ちょっといい作戦思いついたから協力しろよ」
「協力…?」
不満気な声をアスランは出す
「そ。実はさ、今からがこっちに来るんだけど」
「えぇ!・が?どうしてです?」
「俺が誘ったから」
再び驚くニコルとラスティ
やっぱり驚く素振りを見せず、口を固く結び
睨みつけるようにこっちを見るアスランを順に見
「ここで一気に勝負つけようぜ」
俺は笑ってみせた
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久しぶりの更新です。
ミゲルの言う通り、次で勝負が付くのでしょうか
そしてイザークはどんどん懐いていってますね。