機械仕掛けの眠り姫2




引き蘢ってるアスランを晩ご飯に連れて行こうとしたら
アスランは居なくて


代わりに見た事のない女の子がベッドに寝ていた


不思議に思って、側に行って
顔を上からのぞいていたら


目が合った


その子はゆっくり起き上がって
とても奇麗な笑顔を見せて
嬉しそうに声をあげた


「あなたが私の王子様ね」


丁度、午後6時頃の話


そしてここには今

初めて会って、いきなりよく分からない事を言い出した女の子と
なんだか丁度いいタイミングでやってきた元ザフトの人と
僕と


「キラ!?どうしてお前が…」


元ザフトのイザークさんのすぐ後にやって来て、とても驚いているアスランが
微妙に重い空気を醸し出していた


「ア、アスラン…この子は一体…」


「イザーク、これはどういう事だ?」

「知るか!俺が来た時すでにフリーダムがいたんだ!」

「5分前行動は基本だろ?何故遅れたんだ」

「うるさい!貴様が俺を騙したからだろ!」

「騙したぁ?」

「そうだ。彼女を作ってやるなんて言って…貴様が制作してどうする!?」

「それのどこが騙したっていうんだ」

「ロボットなんて聞いていないぞ!」

「お前、ロボット差別するのか?」


僕の問いかけを完全無視して二人の口論は続く

この女の子はどうやらアスランそしてイザークさんと
関わり合いがあるのはなんとなく話を聞いて分かったけど


それよりいつになったら僕は普通に名前を呼んでもらえるんだろう
僕はフリーダムって名前じゃないって


うるさい二人から目を背けて女の子を見ると
また、奇麗な笑顔を向けられた

手もまだ握ったままだし


少しドキドキする…


「だぁ!とにかく俺が来た時にはフリーダムがいて女は目覚めていたんだ!」


イザークさんに思いっきり指を指され
アスランが僕を見た後、ため息をついたのを見計らって口を開く


「ねぇ、それでアスラン!この子は一体何なの?」


アスランはもう一度ため息をついた

少し隈の残る目元が切なかった


「つまりこの子は俺が作った、対イザーク用人型ロボットなんだ」

「人型…」

「一応人間に近い構造をしている。感情もあるし思考回路もある」

「だがロボットはロボットだろ」

「イザークよりは人間らしいよ」

「なんだとぉ!」

「まぁまぁ落ち着いてよ今は説明を聞いてるんだし」

「そうだ、少し黙れイザーク」


イザークさんは納得しない顔をしながらも黙り
僕はアスランを見て、先を促す


「彼女にはあらかじめ俺達の情報もインプットしてある」

「僕たちの?」

「その方がいちいち自己紹介するより手っ取り早いだろ?」


それはそうかもしれない

隣の彼女に、僕の名前分かる?と聞いたら

もちろん、キラでしょ?そして私の王子様
とにっこり返された


「ねぇアスラン、どうしてこの子は僕の事王子様って言うの?」

「それはだな…」


アスランはイザークさんをひと睨みしてから続ける


「彼女は本来イザークの恋人になるハズだったんだが
 ちょっとした遊び心である事をプログラムしておいた」

「ある事…ってまさか」


「そう、彼女が目覚めて初めに見た異性を好きになると」


成る程、それで目覚めて一番初めに見た僕の事を王子様って…
そういえばアスランってお姫様系の童話好きだったからなぁ

あ、でもそれじゃあ僕悪い事しちゃったのかも
本当はイザークさんが王子様って呼ばれるハズだったのに


「あ、あの、ごめん。僕知らなかったから」

「いや、キラのせいじゃないさ。悪いのは全てイザークだ」

「なっなんで俺が!」

「ちゃんと念を押したのに時間を守らないからこうなったんだ」

「今からプログラムを変える事はできないの?」


駄目もとでした提案は
やっぱりあっさり却下された


「駄目だ。感情は繊細なものだし、もう俺でもいじれなくしてある」


と、いうことは


「悪いが彼女を恋人にしてやってくれ」

「そんな…僕にはもう--」

「ふはは、いいザマだなフリーダム!」

「原因はイザークさんなのに威張らないでよ」


初めて言い返してやった
ちょっとすっきり

ため息をひとつ吐いてアスランを見る


「とりあえず食堂に行こう?アスラン昨日から何も食べてないだろ?」


食堂にはもう皆いるハズだから
騒ぎが起きる前に、誤解される前に
皆やラクスにこの子の説明をしなきゃ


「そうだな…行くぞ、イザーク」


イザークさんは彼女と僕にそれぞれ鋭い視線を寄越して
さっさと食堂へ向かう

僕は不思議そうな顔の彼女の手を引いた


「行こう」

「どこに行くの?」

「食堂って所だよ…えーと」


この子の名前なんだっけ
そういえば聞いてないや


「アスラン、この子の名前なんていうの?」

「""いい名前だろ?」

?ってアスランの初恋の子のーー」

「さぁ!急ぐぞキラ!イザーク!」


あからさまに遮ってきたってことは図星だったのか

アスランも案外可愛いとこあるんだ


、アスランが怒る前に行こうか」

「うん」


澄んだ目が僕を見上げた





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キラ視点でした。
主人公らしく、ひょんな事からヒロインの『王子様』になってしまいましたね

ヒロインが目覚めて初めて見た異性を好きになるという設定は
話の中では、童話の影響という事になってますが
本当は「北○の拳」が元ネタです…
そういう設定があったもので

キラもヒロインに対してまんざらでもない様子ですが
イザークは…どうなんでしょう?
それは次回以降にて!