機械仕掛けの眠り姫4
口が裂けても言えるわけがない
本当は、惜しい事したな。
と、思っているなんて
「しっかしイザーク、マジ惜しい事しちゃったよね」
一瞬思考を読まれたのかと思い、飲みかけのコーヒーを
ゴボッとカップに戻した
いやいや、別に思考を読まれたわけじゃない
ただヤツはなんとなく言っただけだ
ここで動揺してはいけない
あくまで冷静に対処をするんだ俺
机にこぼれ落ちたコーヒーの雫を隠すように
その上にカップを置き
口の端をつり上げて、嫌味に笑うディアッカを
睨みつけてやった
「何の話だ」
「ちゃんの話だよ」
「ほざけ、人間外に興味はない」
「へー」
嘘付け。とでも言いたげな視線に耐えきれず
机を手のひらで叩き付けて立ち上がる
「そ、それにだな!は仮にもアスランの娘なんだぞっ」
そうだ。ここが重要なポイントだ
は仮にもアスランの娘
ということは、だ
「将来ヤツの事を”お義父さん”と呼ばなくてはいけないんだぞ!」
びしっと決めてやったのに
ディアッカは動じない。嫌なヤツだ
「そんな事まで考えてたのかよ?」
「ううっうるさい!」
「てかさ、いーじゃん別に。血が繋がってるワケじゃないんだし」
「む…」
「それに見た目親子つーか、兄妹みたいじゃん?あの二人」
「むむっ…」
まずい。
納得しかけている…しっかりしろ俺!
ここで納得や妥協しては駄目だ
芋ヅル式に、
本当はちょっと惜しい事したなと思っているのがバレる!
「とにかく!俺はあんな女興味ないし、本当はちょっと惜しい事したな。なんて思ってないからな!!
」
わめいて
気分を害したから部屋に戻るという風にみせかけ
小さな食堂から脱出した
「分かりやすいヤツー」
というディアッカの腹を抱えて笑う声が響いてきたが
大丈夫。俺はうっかり本音を言ってしまったなんて
ドジは踏んでいないハズだ
とはいえ、本当に部屋へ帰って閉じこもるのも寂しい
展望ブリッジで外でも眺めるか…と考えながら
廊下をゆっくり闊歩する
アスランの部屋の前を通りかかって
無意識にドアを見つめる
同時に、の胸を高鳴らせる程の愛らしい微笑みを思い出す
本当は、あの微笑みは俺に向けられるハズだったんだ…
でも、変なプライドのせいで
いや
「ふ、ふん。プライドを持って何が悪い」
コーディネイター以外の女なんて
人間外の女なんて
アスランの娘なんて…!
気を強くもって、未練にも似た後悔をたち切る
と、
「あ」
「…!」
見つめていたドアがプシュッと開き
今まさに考えていた人物が中から飛び出してきた
途端、
強気を保とうとしていた俺の心は崩れ
心臓がリズミカルに踊りだし、頬は熱を帯びてゆくのが感じられた
「おはよう、オカッパさん!」
「誰がオカッパだ!!」
思わず、勢いで突っ込んでしまった…
流石アスランの娘。油断できない
「へ?違うの?」
キョトンとした顔も中々
…ではなくて、一体誰がそんな変な名前を教えたんだ?
「あれー、あなたの顔は“オカッパさん”で登録されてるんだけど…」
分かってたけどな!アスランめ!!
「俺の名はイザーク・ジュールだ。覚えておけ!」
「うん、今書き換えるから待っててね…と、OK!」
爽やかな笑顔にときめきかけて、咳払いでごまかす
「で、貴様はーー」
「貴様じゃないよ。私、っていうの」
「…はこれから何処へ行くつもりだ?」
「キラのとこ」
やっぱり
「ふん。お気に入りなんだな」
「うん、大好き。私の王子様だもん」
言葉の方が物理的な攻撃より人を傷つけるのだと実感
いまの言葉は、ストライクに傷つけられた時よりいたいいたい!
言葉の暴力に傷つけられ、暗い気持ちで俯くと
下から覗き込んで来た二つの目
「どうしたの?」
「ぅわ!!」
反射的にのけぞって、背後の壁と後頭部が衝撃的な出会いを果たした
「だ、大丈夫?」
「…大丈夫だ、気にするな」
「分かった。気にしない」
あっさりにっこり返され
やっぱりもうちょっと心配して欲しかった
せめて後頭部を撫でて、痛いの痛いの飛んで行け位
言ってほしかったなと思う
「あ、と。こんな所で時間食ってる場合じゃなかったんだ」
何気に酷い言葉を吐き
天使の様な無邪気な顔で「じゃあ」と小さくてを振った
「またね、イザーク」
「あ、ああ…」
行くな。と引き止めたい衝動を
プライドが押さえ込む
向けられた背中を、心持ち切ない思いで見つめていると
ふいに、がこちらに振り返った
「イザーク」
名を呼ばれ、沈みかけた心臓がリズムを再開する
「な、なんだ?」
「その髪型、ナウいね!」
グ。と親指を突き出し
同時に下手なウインクをしては素早く角を曲がっていった
一人きりになった俺は
「古っ」
小さく突っ込んだ
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久々に続きを書きました。
実はイザ−クのヒロインに対する気持ちを
曖昧に設定したまま連載始めちゃったので
今回凄い難しかったです…
でも、イザ−ク、どうやら一目ボレしてしまったらしいですね!