機械仕掛けの眠り姫5
「わたくし、本当に実感しましたの。あなたは凄い方だって」
彼女は、桃色の髪を揺らしてふわりと笑う
何も知らない誰かが見れば
天使の笑みだと思うだろう
でも
それは悪魔の笑みだ
「。どこから見ても普通の女の子」
「あ…はぁ、どうも…」
「どこからどう見ても、キラに恋する普通の女の子」
距離はずっと1メートルを保っているのに
急に詰め寄られた感じを覚えて、思わず一歩後ずさった
「あ、あのそれは事故で…本当はイザークの――」
「えぇ、知ってますわ。キラから聞きましたもの」
ラクスは相変わらず笑顔だが
背後には般若が見える
隙を見せると殺されそうな雰囲気に
にじみ出た冷や汗が背中を伝い
咄嗟に視線だけで、サイドボードの引き出しに仕舞った銃を確認した
「アスラン」
「は、はぃい!」
急に名前を呼ばれ、声が裏返った
「…少し、息抜きをしてはどうですか?」
「え…え?」
「を製作する為に、相当お疲れになったでしょう?」
「いえ…もう充分休みましたし」
を製作したのは、2日も前の話だ
なんで今更…
「そうおっしゃらずに、皆も遊びたがっていますし」
「みんな…?」
「えぇ、みーんな」
不意にラクスが視界から消え
次の瞬間、目と鼻の先に現れた
殺られる!?
攻撃を避けようと手を挙げかけたが間に合わず
鼻の下に衝撃が走った
「さぁ皆さーん!おヒゲの人が的ですよー」
おヒゲ…?
もしやと思い鼻の下に触れると、そこには付けヒゲが――
咄嗟に閉じていた目を開くと
ラクスの背後に無数の目
「ハロハロ、マトヤッツケル!」
と、そのどれもが可愛い声を挙げていた
「さぁアスラン、ハロと遊んで下さいね」
それから、
あ、ついでにおネギも買ってきて。とでも言うかのように
軽い調子でラクスは続けた
「そうそう、この子達はわたくしが少し手を加えましたので
捕まると…とても悲惨な事になりますの」
冷や汗がまた一つ、額から顎に伝わって落ちた
「はぁっはぁ…」
「マーテー」
「ハロ!ツカマエル!」
無数のハロに追われ、アークエンジェル内を疾走する
やはりラクスを敵に回すと怖い
イザークさえキチンと来ていれば、こんな思いをする事なかったのに
イザークの性格だ
俺を疑って、来ない可能性もあった
でも、でも…なんでよりによってキラなんだ!
キラじゃなくても良かったハズだ…
キラじゃなくても
溢れる涙を拭い、迫り来るハロから逃げる
…と、前方に人を見つけた
「イ、イザーク?」
イザークはドアにぴったり耳を付け
中の様子を探ろうとしていたり
扉を開けようかどうしようか悩んでいた
…しめた!
「イザーク!」
高く叫ぶと、妙に焦ったイザークの顔がこちらを向く
「ア、アスラ…ちち違うんだ俺は何も――」
イザークが必死に訴えているが
今は無視する事にした
ラクスに貼りつけられた付けヒゲを外し
「受け取れ!イザーク!」
イザークの鼻の下に叩きつけた
その手で素早くボタンを押し、開いたドアの中に転がり込む
すぐにドアが閉まり
断末魔にも似たイザークの絶叫がドアの向うでした
許せ、イザーク
それにしてもラクス、一体どんな改造を…
考えかけて、こちらを見つめる二人分の視線に気づいた
「あ…」
「アスラン」
「お父さん!」
キラと、
組みたててる最中らしい何かを持ったままのが
どうしたの?と聞いてきた
「あ、いや、ちょっと色々あって…」
「ふーん」
事情を知らないは、そっけない返事だったが
何かを察したらしいキラは、同情的な視線を送ってきた
その視線を振りほどこうと、無理矢理話題を作る
「と、ところで何やってるんだ?二人は」
「あのねっハロ作ってるの!!」
元気よくが答えた
二人の前に広がるパーツに見覚えがあると思ったら
ハロのパーツだったのか
…しかもこれは、完成したものを解体して組み立て直してるな
頼むから、皆もう少しハロを大切に扱って欲しい
「本当はね、トリィが良かったんだけど、難しいからダメってキラが」
「あれはアスランじゃないと…あ、ココのパーツあれじゃない?」
「あ、ホントだ!」
目当てのパーツが見つかったらしく
ゆっくりパーツに伸びたキラの手と
一拍遅れて伸びたの手が、パーツの上で触れ合った
「「あ…」」
手を触れ合わせたまま、二人は顔を見つめ合わせ
えへへ、ごめん。とは笑い
キラは頬を赤く染めた
「な…」
なんて初々しいんだ!!
もしかすると、キラとなら理想的な清く正しい交際が
出来るのかもしれない
いや、出来る!
「キラ!」
力一杯叫ぶと、名前を呼ばれた親友はビクリと肩を振るわせ
の手から手を離す
「を…頼む!!」
「え…ちょアスラン!急に何言い出すの?」
さっきよりも赤みを増した頬、照れながら焦るキラを
きょとんとした目で見つめてから
はその目で次に俺を見た
俺は大きく頷いてみせた
…ちなみに
改造ハロによって、ボロ屑になり通路に漂っていたイザークは
ディアッカに保護された
らしい
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ラクス様はかなり怒っているようです。
そしてアスランはキラ派になりました。
ちゃんとキラVSイザークになるのか、不安になってきた
今日この頃です