前略、森の中より#5












「ざーんねん。だったわねぇ」




腰に手を当て、見下ろして笑う私を
古典的に縄で腰と手と両足をグルグル巻きにされた
捕虜一号が睨んで見上げた




「くそっ…」




「喧嘩じゃないんだから、正面から清々堂々となんて
バカのすることよ。バカの」

「バカバカ言うな!」

「あーそりゃ失敬」


全く悪いなと思わずに謝ると
イザーク・ジュールはきっちり縛られた両足を
バタバタと暴れさせる




「くそっくそ…くそぉ!」




おーおー、お熱いことだ
熱くて負けず嫌いなのは、嫌いなタイプじゃないんだけどね

暴れる両足にどっかと腰を下ろす
のるな!とイザークの怒声




「くやしい?」




笑って言うと、すぐに返答が来る




「決まってるだろ!貴様ごときに…俺が…」

「ま、経験の差ってやつよ」




腰を浮かせ立ち上がる
両足は静かになっていた




「あなたも経験さえ積めば私位にはすぐなれるわ。そこそこいいセンいってたし」




本音を口にすると、イザークの目と口が
間抜けに開く




「…それは、褒めているのか?」


「一応」


「ふん。…貴様、思ったより悪いヤツじゃなさそうだな」


「はは、さっきのは演習用だから」




実力を出させる為にも、挑発しておく必要があったしね

暴れるのも止めて、黙り込んだイザークからは
私に対する敵対心は消えたみたい

本当は演習中に敵対心無くすような事
言っちゃダメなんだろうけど
イザークは捕虜だからいいよね

一人で、うんうんと頷き納得した時

背後から何かが転がってくる音に素早く振り返った




「なに?!」




草むらから、こちらに向かって転がってきたのは…




「ホントに…なに?」




オレンジ色の丸い物体

私の足元近くで止まると
丸っこい二つの黒い点が見つめてくる

それは、人懐っこそうな瞳にも見える
丸い物体は、体を左右に振ってハロハロと可愛らしい声を出した




「はろ…?」


「ハロ!?」


「…知ってるの?コレ」




大きく叫んだイザークに向き直り
ハロハロ言う丸い物体を指差す




「あ、ああ、これはアスランが好んで作っている愛玩ロボットだ」

「アスラン?」




アスラン。という言葉に私の心が激しく反応する




「愛玩ロボットが、どうしてこんな所に?」

「そんな事っ俺が聞きたい位だ!」

「アーソーボー」




再び聞こえた愛らしい声
その主を見ると、さっきまで黒かった瞳が
赤く点滅していた





「ヤバ!」






赤い色が、脳に警告を促し
咄嗟にアスラン製、愛玩ロボットを掴み上げると
できるだけ遠くへ
青い空に向かって、腕をしならせ放り投げる

そのままイザークに振り返りながら叫んだ




「伏せて!…って無理か!」




厳重に拘束させた体で、身動き取れず
オロオロするだけのイザークの赤い襟首を掴んで
引きずり倒し

覆い被さって私の体で顔を隠した





一瞬の間をおいて





木々をほんの少し、ざわめかせた爆音
大した威力のない爆風が地面に伏せた体を撫でていった

破片での、ある程度の怪我は覚悟していたけど
僅かにオレンジの破片が降ってきただけだった

どうやら、極めて威力の小さい爆弾だったらしい

ちょっとホッとして、地面に手をつき
上半身を起こすと、下敷きにしていたイザークを
上から覗いた





「大丈夫?」

「あ…あぁ」





目をパチパチさせ、驚いたままの顔のイザークをみると
安心して

自然に口許を綻ばせた








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タイトルは忘れましたが
ガンダムのゲームで、ハロが

「アーソーボ」と言いながら敵を倒しているのを見て
思いついた話です。

ハロ怖ぇー!!