前略、森の中より#6





「いい動きしますね」


呟いた言葉にコメントを返す人はいなかった

レンズの向こうでは
が倒れたままのイザークを引き起こし
顔に付いた泥を払ってあげている


「失敗しちゃったじゃん、アスラン」

「想定内だ」


あまり残念そうにしてないラスティに
アスランは冷たく言い放ち
オペラグラスから目を離し、隣から顔を見つめた僕を
見る事なく続ける


「あれ位、回避してもらわないと困る」

「おー怖」


あの小型爆弾――通称ハロ弾をの元に寄越したのは
倒すのが目的じゃなく、ただの様子見
何の邪気も感じられないプリティーな愛玩ロボットを
爆弾だと気づくかでの力量を確かめる

というのがアスランの説明だった


あれをギリギリで爆弾だと気づいたは凄い

けど、いくら武器類の持ち込みはOKだと事前から知らされていたとはいえ
ハロ弾をあらかじめ用意していたアスランは頭がおかし――いやいや、もっと凄い

と僕達が戦う時、アスランの足手まといにならないかと
ほんの少し不安になった

同時に耳に届いたアスランの声


「行くぞ」


一気に現実に引き戻されてアスランを見ると
すでに上半身を起こし、しゃがんだ状態になっていた


「え、移動するんですか?」

「ああ。ハロの転がってきた方向から俺達のおおよその位置を掴んでいるハズだ」

「…なる程」


僕も上半身を起こし、しゃがみこんでラスティに降り返る


「ラスティ、行きますよ」

「おぅ」


返事をしたものの、ラスティは双眼鏡にくっつけた目を離さない

何か気になる事があるのかと
オペラグラスを取り出し、の方向を見る

がイザークの両頬を引っ張って遊んでいた


そして


「…いいなぁ」


ぼそりと、ラスティが呟いた気がした





頭上数メートルの所に何か丸いものが飛んできたと思ったら
いきなり爆発したからビビッた

降り注ぐ破片から手で頭を庇って伏せつづける事約1分
ようやく破片が降り終わった

頭を振りながら、転がってきた爆弾をコッチに投げてきた
を見ると
引き起こしたイザークに何かを話しかけ
イザークの返答に頷いて、銀髪をクシャクシャに撫でると
一瞬でどこかへ消えた


さっきの爆弾犯を捕まえに行くのか?


…今が、チャンスかもしれない

イザークを助け出そう

周囲を見渡して、の気配が無いのを確かめ
腰を浮かす

大丈夫だとは思うが、一応中腰の状態で草を掻き分け進む
草の切れ目で小さくイザークを呼ぶと
左右を探してから、俺の姿に気づいた


「大丈夫かー?」

「貴様そこで何をやってる」

「いちおー助けに来たんだけど」

「なら早く来い」

「へいへい」


それが助けてもらおうってヤツの態度かよ、と内心ツッコミつつ
今度は四つんばいになってイザークへ近づく

当然ながらの気配はない

あと1メートルを切って、もう少しでイザークの足に届きそうだという時

ふいに背後に感じた気配と
後頭部に押しつけられた固いものに全身が凍りつく


「いらっしゃーい」

「なんで…」


頭に銃らしきものを押し付けたまま
が正面に移動してくる

腰をかがめ、俺と同じ視線まで目を持ってくると
ニコリというよりニヤリと笑った


…余談だが、少し可愛いと思った


「爆弾犯…アスランを追ったと思った?」

「…」

「とっくの昔に移動しちゃってるわよ」

「……」

「それでも一応追ったフリしておいて正解だったわ」

「…なぁ」


額から流れた汗が顎を伝って地面に落ちたのと同時に
なんとか言葉を搾り出せた


「何?ディアッカ」

「安心して笑っててもいいのか?」

「…ん?」

「どうするんだ?…俺が、ただの囮だったら」

「…おとり?」

「これもアスランの作戦かもしれねーって事」


もちろんハッタリだけど
一瞬でも動揺すれば隙が生まれる

そうなれば、俺の勝ち――


「……フッ…」


という俺の甘い考えは、の笑い声にかき消された


「あはは!それはナイナイ」

「なっ、なんで…!」

「だって、あなた達二人がアスラン達と仲間割れしてるのは知ってるし」


…バレてたのか


「あなたは一人で来るって、イザークが断言したわよ」

「イザーク!!」

「すまん、ディアッカ」


謝る気0だろ!

の脇からイザークを睨むと
の顔が横にずれてイザークを隠した


「歓迎するわ。ディアッカ」





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イザーク組は早くも全滅ですね。

ディアッカのキャラとか喋り方がイマイチ把握できてませんで…
ニセモノっぽくなってしまいました